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営業はデータで強くなる。ビジネス職とエンジニア職が一枚岩で事業成長をつくる現場で起きたこと【前編】
Interview Member
データが事業成長のボトルネックになっていた
CARTA MARKETING FIRMでは、複数の運用型広告プロダクトを組み合わせて顧客にサービスを提供しています。2011年に産声をあげたアドネットワーク事業は、市場の発展とともに急激な成長を遂げました。一方で営業現場は悲鳴をあげていました。
デジタル広告の強みは、データの力で最適な効果を実現できること。顧客にとっての満足は実現できていましたが、営業や運用を担当する人にとっては、そうではありませんでした。なぜなら、業務の担当者にとって、データ分析に大変な手間がかかっていたからです。
―実際にはどのような状況だったのでしょうか。
三澤 私は広告配信プラットフォーム「Zucks」の営業部門にいます。その中でもメディア側(*1)を担当しています。具体的にどんなことが起こっていたかというと、リーダー陣が毎朝30分程度かけてデータを抽出していました。チームの進捗状況を把握するためです。
複数のツールから抽出したデータをエクセルで突合して集計するのですが、そのやり方が人によって違うので、数値がずれてしまうこともある。レスポンスに5分かかるツールもありました。
そんなこんなで、数値の着地予想もずれることが多くありました。
里岡 私はデータアナリストという立場です。昨年の着任当初は、ほしいデータを出すのにとてつもなく手間がかかり、仮説検証どころではないという状況でした。たとえば、分析のためのデータセットを1つ作るのに、1回30分かかるデータ抽出を何度も繰り返す必要がありました。
なぜかというと運用型広告のしくみを動かすためのデータベースしかなかったからです。具体的には、複数の広告プロダクトごとに特化したデータがバラバラの形で散在していました。すると、散在する管理画面などから無理やりデータをかき集めることになります。
このような状況で、タイムリーに必要な指標を出すのは困難です。実質的に出せる指標が限られているといってもよい状態でした。
三澤 その影響は事業経営にも及んでいました。以前は部署で定めたKPIが、事業全体のトップライン(*2)向上にどれくらい貢献しているのか、よくわかりませんでした。たぶんこうじゃない?ぐらいで設定するしかなかった。
里岡 データそのものは、眼の前にある。宝の山なのは自分たちが一番よく知っている。でも使えない。そんな状況が続いていました。

*2 トップライン=売上高。営業収益。企業の財務諸表、特に損益計算書の一番上(トップ)に記載されることから。
分析業務のためのデータ基盤を作った
ー営業担当者の業務を変えたしくみとは、一体どのようなものなのでしょうか。
上田 一言でいうと分析に適したデータベースをつくりました。プロダクトごとにバラバラの形式で散在していたデータを、分析しやすい形にして一箇所にまとめたものです。
里岡 これまではプロダクトごとに複雑なクエリ(*3)を書いて苦労してデータを抽出していました。それでも分からない部分は残るので、データを参考に想像するしかありませんでした。いまでは、シンプルなクエリを書けば、一発で案件ごとに複数プロダクトを串刺しで分析できます。新しいデータ基盤から初めてデータを抽出したときは、レスポンスの速さと容易さに感動すら覚えました。
三澤 今回開発されたもので、私が日々使っているのはダッシュボードですね。いつ見ても最新の状態に更新されています。毎日の変動をきっかけに分析することが多いんです。パフォーマンスの低下は広告の成果、そして売上と利益に直結しますから。変動要因の分析も、数分で完了してしまいます。

データの力でチームメンバーのポテンシャルが発揮された
ー今回、その状態を解決するものが開発されたそうですね。データが扱いにくい現場はどのように変わったのでしょうか。
里岡 まずKPIがデータに基づいて設計できました。各部署が受け持つ指標のうち、どれがKPIなのか。別の言い方をすると「各人がどんな努力をすれば事業のトップラインが伸びるのか?」をデータで説明できるようになりました。
三澤 設計されたKPIは納得感が高かったです。データで説明できると、業務での重みや取り組み方もまったく変わってきますから。事業にかかわるみんなが「道が拓けた!」と感じたのではないでしょうか。
里岡 指標を要因分析するためのダッシュボードも実現できました。
三澤 これは本当に助かってます。もう信じられないくらいに楽になりました。以前は数値の変動理由がなかなかわからず、日々頭を悩ませていました。今では数回クリックするだけでだいたい当たりをつけて、対処できるようになりましたからね。
先ほど言った毎朝の作業は30分が5分に短縮されました。稼働日を20営業日として考えると、約8時間。月あたり1日分の工数になる。さらに人数を掛けると、莫大な工数削減です。
ーローンチ後、まだ日は浅いですが、業績などへのインパクトはありそうですか?
三澤 広告運用で設定しているKPIを大幅に向上させることができました。売上総利益にもインパクトをもたらしています。
またチームメンバーが利益の成長も意識するようになってくれました。自ら考えてトライしてくれます。データの仮説検証コストが下がった結果ですね。
事業に関わる各部署がデータを根拠にして動き、KGIも上向いてきています。

実現のきっかけはトップの決断
ー取り組みの発端は何だったのでしょうか。
里岡 2023年に、広告プロダクト事業にとってKPI設計が経営課題となりました。確証のない努力を重ねても、これ以上事業を伸ばせないという危機感がありました。「KPIとして適切な指標が何かを特定し、全員がKPI最大化に取り組んでいる状態を目指そう」と決めました。
三澤 それまでは売上や売上総利益といった結果指標を、チーム、個人が追っているだけでした。その手前のKPIを設定しても、納得感は高くなかったですね。そのうえ、KPIを追いかけたくてもデータを出すのも大変という状況でした。
そんな中で、里岡がデータで根拠を示しながらKPIの検討を一緒にすすめてくれました。
里岡 KGIは売上総利益。これに対して何が最も説明力のある変数なのか、過去のデータから分析して特定し、KPIを定めました。
私はデータを使って事業成長を実現するのがミッションです。そのために開発を推進するプロダクトマネージャーという役割も兼任しています。
関係する各部署と意見を交わし、状況を正確に把握するよう努めながら、確からしくて使われる指標になるようにしました。
基盤への投資が実現を後押し
ー実際に取り組んだ期間は約半年、開発の期間は2ヶ月程度だといいます。このタイミングで比較的短期間に成果が出たのはなぜでしょうか。
上田 私はデータエンジニアとしてこの事業に関わっています。前提をお話すると、私の仕事は事業部メンバーの業務を促進する土台をつくり、さらに自走できるようにデータの力で支援することです。そのために、あらゆる機会で事業の状況やメンバーの業務について理解に努めています。この会社は雑談も活発ですが、それも重要な役割を果たしていると思います。
今回は里岡と共に「案件(*4)」の定義にまず注力しました。「案件」という言葉は、各チーム、各員がそれぞれの解釈をしており、組織としての共通言語になっていませんでした。そこで改めて当事業における「広告案件」として定義し、それをデータモデルに落とし込みました。期間でいうと2ヶ月弱といったところです。里岡がとにかく各部署の業務をよく理解しているので、里岡との連携をしっかりやるように心がけました。
付け加えると、里岡のモチベーションがものすごかった印象があります(笑)。その熱量に触発された部分は大きかったです。
里岡 技術的な面でいうと、とりかかる直前までに社内でデータ基盤を整備してくれていた、というのは大きかったですね。データを扱うための地ならしが済んでいました。我々がやったことは、ロケットの2段目か3段目という認識です。
上田 そうですね。ここにはいませんがデータエンジニアである近森の貢献がとても大きいです。2024 Snowflake Data Superheroesに選出されたことでも話題になりました(プレスリリース/TECH BLOG記事)。

価値の実現を優先してやることを削ぎ落とした
ーとはいえ、難しかった点もあったのでは。
里岡 たとえば広告案件ごとに指標を出したいわけですが、上田が述べたように「案件」の定義、単位は現場によってバラバラだったりします。でも、意味のある分析をするためには統一した定義に従う広告案件の管理データが必要になりますよね。この管理データづくりは、「頑張るしかない」作業でした(笑)。
上田 あれはデータ構築のドブさらい作業でしたね(笑)。各部署から情報を引き出して、すり合わせをして。でも広告案件データの登録で営業担当者に負荷がかかるようだと、うまくまわらない。営業の業務にほぼ影響しないように、でもデータとしてはほしいものが出るように、やるべきことを最低限に削ぎ落としました。
里岡 価値の検証を最優先したので、現時点では一部私が手動で運用する部分をあえて残したりしています。スコープも広げすぎないようにしました。何を優先するべきかは気をつけているところです。

前編のまとめ
ここまで前編をお届けしました。前編ではデータをとりまく課題を認識して、対策を進めるプロセスを紹介しました。その中で、それぞれの現場を受け持つ彼らがスムーズに、そして軽やかに連携して動いている様子が見えました。
3名ともお互いの業務と、事業全体の課題について見通せている様子で会話しているのが印象的でした。
後編では、その連携を実現している「組織」について話を聞きました。
